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The Hunger of the Shadow · 章 5 — 第5章 迷霧

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章 5

第5章 迷霧

北区は渝州の北部に位置し、かつて開発されたことのない荒涼たる土地で、山々が連なり、人の足が踏み入れることは稀だった。

早くから探検家たちがここで怪異に遭遇したという噂があったが、天地の異変が起きた今、噂は現実となり、ここに小規模な鬼域が誕生していた。

鬼域の成因はいまだ謎に包まれているが、いずれの鬼域も生者が足を踏み入れてはならない絶地であり、そこには濃厚な死煞と無数の魑魅魍魉が漂っている。

もっともよく知られているのは、華西エリアの「迷途鬼域」だ。

かつて千万の人口を誇った西都は、今や迷途鬼域に完全に飲み込まれ、生者の禁地と化している。

……

連なり起伏する山並みは、まるで大地に伏せた巨龍のようだ。

江寒たちは今、山口に立ち、入山の準備を整えていた。

それぞれの顔には異なる表情が浮かんでいる。興奮する者、恐れる者。

命の危険はない亡魂とはいえ、思春期の少年少女たちにとって、心理的な圧迫は小さくない。

「江寒、あとで一緒に行かないか?」

太っちょが江寒の服の裾を引っ張り、心配そうに声をかけた。

江寒は首を横に振った。「いや、別れて行動したほうが効率がいい」

彼の体内にある「影」は、この世界では異類に属する。他人の目に触れないほうがいい。

江寒の視線が、遠くで衆人に囲まれている白若雪へと向けられた。

彼女の周りには今、大勢の追従者が集まっている。御霊者になったばかりだというのに、すでに指導者の風格を漂わせていた。

時間を見計らった陳淵が口を開いた。「よし、山に入ろう」

その言葉に、全員が顔を見合わせたが、誰も最初の一歩を踏み出そうとはしなかった。

シュッ!

突然、江寒が最初の一歩を踏み出した。

彼は他の者たちのように迷うことなく、断固として前へと進んだ。

江寒の背中を見て、人々の目がわずかに変わった。

「あれは誰だ?」

「三組の江寒じゃないか?」

人垣の外にいた陳淵は密かに頷き、心の中でつぶやいた。「あの少年、決断力があり、ぐずぐずしない。材になる……惜しいことに資質が今ひとつだが……」

白若雪は六人のチームを編成し、先頭に立って手本を見せるつもりだったが、まさか江寒に出し抜かれるとは思っていなかった。

「ふん、私たちも行くわよ!」

白若雪は江寒の背中を記憶に刻み、すぐにチームを率いて出発した。

「あの馬鹿、実力もないくせに、こういう場面で目立ちたがるんだから」

章鋒は軽蔑したように唾を吐き捨て、数人を連れて山に入っていった。

……

鬱蒼とした森の中。

古木が天を突き、灌木が生い茂っている。

江寒は全神経を研ぎ澄まし、慎重に前進した。

真昼だというのに、この森に入ると、不気味なほど夜のような暗さに包まれた。

陽の光は幾重にも重なる枝葉を貫くことができず、森の中は幽暗で死寂に満ち、不安を煽る気配が漂っていた。

「大丈夫、ただの亡魂だ」

江寒は深呼吸をし、自分自身に言い聞かせた。

サワサワ——

突然、一阵の陰風が吹き付けた。

江寒の体が強張り、目つきが鋭く変わった。「来た!」

陰風とともに、周囲に淡い惨霧が立ち込めた。朝の山霧のようだが、より蒼白で陰森としている。

黒い光が一閃した。

妖異な短剣が、江寒の手に逆手に握られていた。

本命霊具の玉のように滑らかな感触を確かめ、江寒はようやく少し落ち着きを取り戻した。

その時、森の温度が急激に下がり、まるで氷穴に落ちたかのようになった。

「若いの……わしの眼玉を……どこへ転がしたか見なかったか……?」

恨めしげな声が江寒の耳元で響いた。

まるで肌に張り付くほどの近さで、首筋には冷たい吐息すら感じられた!

江寒は総毛立ち、足がすくんだ。

次の瞬間、彼は舌先を強く噛み、無理やり体の主導権を取り戻すと、手中の短剣を黒い光と化し、猛然と空気を切り裂いた。

ビリッ——

人型の惨霧が、ぼろ布のように短剣に切り裂かれた。

続いて、淡白色の水滴が空中からしたたり落ちた。

江寒は急いで懐から白玉の浄瓶を取り出し、その水滴を受け止めた。

この水滴は、亡魂が消散した後に残るものだ。

御霊者の日々の修行に大いに益があるとされ、魂玉ほど貴重ではないが、それなりの価値がある。

この白玉の浄瓶は、来る途中で陳淵から配られたものだ。

「ふぅ……」

亡魂を一体消滅させ、江寒は安堵の息を吐いた。

過程は容易だったが、突然の恐怖感には、確かに一瞬どうしようもなくなる。

「この短剣、使いやすいな」

江寒は手中の霊具の短剣を弄び、先ほど亡魂を切り裂いた感覚を反芻した。

少しの抵抗もなく、豆腐を切るように軽々と切り裂け、体内の霊力の消費もわずかだった。

「スキルスロットがもっとあればいいのに」

江寒がそう考えていると、周囲の惨霧の中からまた別の亡魂が飛び出してきた——

「なぜ……私は死んだのに……お前は生き延びている……悔しい……」

この亡魂は先ほどのものより少し凝実しており、大量の怨念を帯びていた。生者を憎み、すべてを死に変えようと渇望している。

声を聞いただけで、江寒は震え上がった。  どんなホラー映画の効果音よりも、よほどリアルだ。

江寒は油断なく、再び短剣を振るい、亡魂を抹殺した——

「うう……娘を見かけませんでしたか……」

「腸が飛び出した……痛い……助けて……」

「後悔している……あの女が私のベッドの下に隠れていたなんて……」

負の感情の集合体である亡魂は、現れるたびに江寒の耳膜を刺激し、彼の理性を揺さぶった。

少しでも油断すれば、これらの孤魂野鬼に精神を乗っ取られ、恐怖と不安に陥ってしまう。

しばらくして。

江寒の周囲の惨霧はようやく晴れた。

「短剣を振るうたびに、体内の霊力が一定量消費されるようだ」

江寒は額の薄い汗を拭い、大きく息を吐きながら、短剣を体内に戻した。

しかし、白玉の浄瓶の中にすでに三分の一ほどの煞液が溜まっているのを見て、それまでの努力は報われたと感じた。

それに、亡魂との戦いを通じて、ある確信も得た。

鬼物は倒せるのだ!

「他の連中は今頃どれくらい集めているのか……」

江寒は眉をひそめた。「いや、私は単独だが、白若雪や章鋒たちはチームで動いている。彼らが資源を一人に集中