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The Hunger of the Shadow · 章 1 — 第一章 影の飢え

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章 1

第一章 影の飢え

夜の色は墨のように、溶け合わない古い血のようだった。

江寒は何もない広い通りの中央に立っていた。街灯の淡い光が地面に歪んだ影を落としていた。冷たい風が数枚の枯れ葉を巻き上げ、沙沙という擦れ声を立て、この死んだような夜の中でことのほか耳障りだった。

彼は手を持ち上げ、動きに合わせて揺れる掌の中の黒い輪郭を見つめた。その目には信じられないほどの迷茫が浮かんでいた。

ほんの数分前、彼は慣れ親しんだ地球にいたのだ。そして今、吐き気を催す腐敗の匂いが漂っていた。それは何か古くて邪悪なものの匂いだ。

「ここはどこだ……」

江寒は小声で独り言をつぶやいた。声は空っぽの通りにかすかに響いたが、何も反応を引き出さなかった。

突然、冷たく陰気な寒気が背中からお头顶へと駆け上がった。それは一般的な寒さではなく、骨の髄まで凍りつくような戦慄だった。本能的に振り返ろうとしたが、身体は錆びた機械のように硬直し動かなかった。

彼の真正面で、曖昧な黒い影が壁の隅の影からゆっくりと剝がれ落ちていた。

そのものは形が固定されていなかった。揉みくちゃにされたベトベトの泥の塊のようにも、痛苦に歪む人皮のようにも見えた。顔はなく、ただ底知れぬ裂け目があり、嬰兒の泣き声のような鋭い悲鳴を発していた。

怨霊。

江寒の脳裏にこの途方もない言葉が浮かんだが、目の前の光景は信じざるを得なかった。この崩壊した世界では、理性は最も無用なものになっているようだった。

その黑影は蠢き、江寒に近づいてきた。それは動くにつれ、周囲の光はすべて吸い込まれるかのように、街灯がジリジリとうなり、ガラスの灯泡が粉砕した。

闇が覆った。

江寒の心臓が激しく鼓動した。死の恐怖が潮のように彼を飲み込んだ。しかし、その怨霊が彼の首筋に触れようとした瞬間、異変が起きた。

彼の足元の影が、突然動き出した。

ただの光による投射でできた黒い輪郭が、まるで貪欲な大口のように猛然と巻き上がり、常识に反してあの怨霊へと伸びていった。

激しい衝突も、天変地異のような音もなかった。

あの恐ろしい怨霊は、江寒の影に触れた瞬間、雪が沸水に遭遇したように、音もなく溶けて消えた。凄まじい泣き声がぴたりと止み、代わりに、深い淵から聞こえてくるような満ち足りた低い声がした。

ゴクッと。

江寒は明確に感じた、冷たくも力強い気流が足底から天靈蓋へと突き上がったのだ。あの感覚は痛苦ではなく、むしろ诡异な愉悦をもたらし、まるで体内に欠けていた何かが瞬間的に満たされたようだった。

街灯が再び灯った。まだ淡いままだったが。

通りは死んだような静けさに戻った。まるでさっき的一切は幻だったかのように。

江寒は荒い息をしながら、冷汗が衣をびしょ濡れにした。彼は恐怖に見下ろした自分の足元を——あの影が以前よりずっと深く、ずっと濃くなり、底知れぬ淵の潭のように深まっているのが見えた。

そして影の奥底で、苦しむ人々の顔が隐约に挣扎するのが見え、やがて完全に沈んだ。

「それが……食われた?」

江寒は震える手を伸ばし、地面に触れようとしたが、途中で止まった。

彼は悟った。この世界は彼の想像よりはるかに狂っている。そして彼自身も、もはやあの普通な人間ではなかったのだ。

この万霊が夜に徘徊し、ルールが崩れた異界で、彼の体内の何かが、覚醒しようとしていた。